パスポートに関係する理由で難民認定申請中に逮捕されるケースについて、これまで長々と書き記してきたが、じつのところ、これは難民認定申請中の逮捕の理由のうち、特殊なものでしかないのだ。そもそも、パスポートと難民認定申請の名前が異なるというのは、そう頻繁にある話ではない。
それ以外の、もっと大きな理由が存在する。しかも、それは日本にいるほとんどの難民認定申請者に当てはまる理由である。
難民認定申請中の逮捕があまりにも多いので、大瀧会長が昨年の暮れ、入国管理局に問い合わせたら、おおよそ次のような答が返ってきたという。
「警察が申請者を逮捕するのは、申請者が不法滞在者である場合であり、これに関しては入国管理局はなにもすることができない。そもそも、不法滞在者が難民認定申請をしたとしても、それだけで不法滞在という罪が帳消しになるわけではない。入国管理局としてはその人が難民申請をしたという事実に関しては責任を持つが、それ以外のこと、つまり警察が不法滞在者として逮捕することに関しては責任を負えない」
つまり、難民認定申請中の不法滞在者、そしてビルマ人に関していえばそうした人はかなりの数に上るのだが、はすべて警察に逮捕される可能性があるのだ。
だが、日本は難民条約批准国である。申請者といえども、その人権は保障されるべきではないだろうか? 大瀧会長が次に尋ねたのはこの点である。その答えは驚くべきものであった。
「本来ならば、不法滞在者の申請者は、収容すべきものであるが、収容所のキャパシティの問題から、問題ないとみなせる者に関しては、仮滞在・仮放免というかたちで釈放しているに過ぎない」
ここに至って、この問題の本質が明らかになる。要は、入国管理局が現在の不法滞在の難民認定申請者の激増に対応しきれておらず、そのしわ寄せが申請者に行っているということなのだ。
つまり、収容所のキャパシティ云々は、あくまで入国管理局の都合である。したがって、キャパシティが足りないから、仮滞在を出す、というのもまた入国管理局の都合であり、申請者は関係ない。
ところが、勝手な都合で外に出しておきながら、警察との関係に限ればその後はほったらかし、というのが入管のやっていることなのだ。自分が世話を仕切れずに、仮滞在許可を出したのだから、少なくともその許可が警察に対しても効力を発揮するように、入国管理局は責任を持つべきなのである。
だから、不法滞在の申請者が捕まったら、入管は警察に対し、こんな風に詫びるべきなのだ。
「ええ、確かにこの人は不法滞在ですが、現在難民認定申請を行っております。当方の勝手な理由で、仮滞在という形で審査の間、滞在を許可しているわけで、申請者の方にも警察の方にもご迷惑をかけております。当方といたしましても、この方に関しては責任を持って対処しておりますので、なにとぞ逮捕だけはご勘弁ください。いえ、この方を逮捕するのであれば、わたくしも一緒に逮捕されます!」
もちろん、入国管理局はこのようなことはしない。ただ、冷たく突き放すだけである。それでもいいかもしれないが、ただ自分のすることには筋を通してもらいたいと思う。
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