これまでは、意図せずしてパスポートの名前が本名とは異なってしまう場合を扱ってきたが、その逆に、意図的にパスポートを偽名で作る場合がある。これはさらに2つの場合に分けることができる。
1)ビルマ政府に対して偽名を用いる場合。
さまざまな理由により政府より命を脅かされ、ビルマから逃げなければならないときに、政府当局の把握している本名を用いたならば、パスポートの発行はおろか、逮捕されかねない、という事態が生じうる。そうした場合に、偽名を用いてパスポートが作られる(ブローカーが介在するのはもちろんのことだ)。
2)日本政府に対して偽名を用いる場合。
すでに不法滞在により強制送還された経歴があるにもかかわらず、事情により難民として日本に逃げてこざるをえない場合、強制送還された名前とは異なる名前でパスポートを作って、ビザを取得して日本に入国する場合がある。
とはいえ、現在では入国時に指紋を照合する体制になっているので、もはやこうした不正は不可能だろう。
特別なケースとして、ビルマ以外の国のパスポートを取得して、日本に入国するというものもある。これは、インドとの国境沿いに暮らすチン人の難民によく見られる。
北東インドのミゾラム州の住人は、ビルマのチン州のチン人と文化・言語に共通性があり、両者は古くから行き来してきた。そのため、チン州のチン人にとって、わざわざ遠いヤンゴンに行くよりも、インド人として偽造パスポートを作り、デリーなどから他の国に行く方がはるかに簡単なのである。
バングラデシュ国境のアラカン州に住むアラカン人やロヒンギャの人々についてはよくわからない。だが、ビルマ政府によって国民とすら認められていないロヒンギャの人々が、チン人同様、バングラデシュ人としてパスポートを偽造して脱出するというのはありそうな話だ。
0 件のコメント:
コメントを投稿