5−1.BRSAチャイルド・ケア・プロジェクト
軍事政権による長い支配と国境における戦争が生み出したのは、教育の荒廃と家庭の崩壊でした。そのため、現在のビルマには、孤児、片方の親しかいない子ども、育児放棄された子ども、親が養うことのできない子どもがたくさんおり、これらの子どもたちは十分な教育を受けることができません。
このため多くの仏教僧院やキリスト教教会・団体が子どもたちのための無料の学校や、家庭を失った子どもたちのための寄宿舎をビルマ各地で運営しています。
ことにヤンゴンにはこうした子どもの施設が多く、はっきりした統計はないものの1,000近くもあるといわれています。こうした施設は通常、個人の寄付によって運営され、ほとんどが政府からの支援を受けてはいません。そのため多くが小規模で、寄宿する子どもたちは通常10人から50人の間にあるようです。
小規模の寄宿舎は通常学校を運営してはいませんが、今回BRSAが訪問した3つの寄宿舎のいずれも学校を併設していました。
BRSAチャイルド・ケア・プロジェクトはこのような子どもの施設を支援するプロジェクトで、現在以下の3つの施設に月100,000チャット(約10,000円)を運営費として寄付しています。その目的は、ビルマの将来を担う子どもたちの生活と教育状況を改善することにあります。
(1)Myo Oo Htan Ta Pin僧院の運営する子どもの施設
この僧院は、ヤンゴン市内から車で45分ほどのShwe Pyi Thar郡にあります。この僧院は1987年の創建で、子どものための施設をはじめたのは1993年のことです。運営に当たられているのはU Thu Sake Thaという64才のお坊さんです。施設の運営する小学校では6才から13才までの155人の子どもたちが学んでいます。その多くは貧困家庭の子ども、孤児、放棄された子どもたちです。この僧院に暮らしている子どももいますが、近隣の村や、近くの別の僧院から通っている子どもたちもいます。施設では5人の先生が働いており、月給は400,000チャット(約4,000円)です。
施設の運営は僧院への寄付によってまかなわれ、子どもたちへの食事やスタッフへの給料などに当てられています。経済的には厳しく「たくさんのものが必要」とのことです。特に机、椅子、図書を必要としているとのことでした。
(2)Nawarat僧院の運営する子どもの施設
貧困層の多く暮らすShwe Pyi Tharにあるこの僧院では、70人の小学生たちが学んでいます。このうち40人が近隣の貧困家庭より通い、30人の男の子と女の子が僧院の敷地内の寄宿舎に暮らしています。最年少は生後2ヶ月の女児で、1歳の兄とともにサイカー(自転車タクシー)乗り場に捨てられていました。赤ちゃんはこの僧院にちなんでNawaratと名づけられ、僧院内に暮らす家族によって世話をされています。
この僧院が創建されたのは2010年のこと。その翌年に学校と寄宿舎が始まりました。現在は2人のお坊さんと8人の先生がこの施設で働いています。先生への給与は月に30,000チャット(約3,000円)。これに子どもたちの食費などを加えると毎月1,000,000チャット(約100,000円)かかるということです。施設は個人の寄付によって運営されています。 子どもたちの教室は2つありますが、ひとつは現在建築途中です。教師への給与が不十分であること、子どもたちの寄宿舎が粗末であること、子どもたちの衣服と食料が不足していることが現在の問題とのことでした。
電気は通じてはいますが、停電が多いのに困っているそうで、水に関しては寄付により浄水器を設置してあるので問題はないとのことでした。
(3)Hmankinn Pariyatti Sarthintaik僧院の運営する子どもの施設
ヤンゴンにあるこの僧院には1,500人の子どもたちが学ぶ大きな学校、Hman Kin Monastic Schoolがあります。この学校の建物は2007年に日本政府と国民の支援により建設されたそうです(ODAの草の根無償資金協力)。ここでは28人の先生が教えています。
僧院には89人の男の子たちが暮らしています。これらの子どもたちは孤児や貧困家庭の子どもたちで、シャン州からやってきたシャンやパラウンの子どもたちも多くいます。これらの子どもたちのために洗濯や炊事をするスタッフもいます。また僧院は3人の医師が務める無料診療所も運営しています。 施設の運営資金となっているのは、さまざまな団体・個人からの寄付です。月に約5,000,000チャットかかるそうです。寄付は常にあるわけではなく、時には僧院の貴金属を質に出して凌ぐこともあるとのことでした。
今回の訪問した施設のいずれにおいても、僧侶の方々が情熱を持って運営しており、非常な感銘を受けました。おのおのの滞在時間が短かったので、子どもたちの背景に関して十分調査をすることができませんでしたが、基本的なことは理解できたように思います。
BRSAのプログラムとして今後の課題とすべき点は次のようなものです。
*寄付金は各々の施設に月に100,000チャットでしたが、これは必ずしも十分とはいえません。
*来訪に際してはささやかでも子どもたちへのプレゼントを用意すべきでした。
*子どもたちの背景に関してもっと情報を収集することにより、ビルマの現状に関してより明確な理解が得られると考えられます。
これらの子どもへの支援はBRSAの「たすけあい」の精神に叶うものであり、今後も重要なプログラムとして継続して行きたいと考えています。
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