7.ビルマの現状について
現在のビルマは、「民主化が進みつつある」「最後のフロンティア」「発展しつつある国」としてしばしばメディア等で紹介されます。確かに今のビルマの変化は著しいものですが、それにも関わらず、貧困問題、政治問題、社会システムの不備やインフラの未整備など、社会生活の根本部分では軍事政権時代とは変わってはいないという印象を受けました。このまま社会が安定すればいずれはこうした部分も改良されていくはずですが、そのような成熟した社会が確立するまでの間は、社会・教育・人権に関するさまざまな支援活動の意義は大きいと考えられます。
ビルマのこれからの変化において重要となると思われる3つのポイントについてまとめたいと思います。
①政治的変化
政治的自由、報道の自由、民族問題解決への動きは確かにビルマの重要な変化といえます。ですが、多くの政治活動家の見るところ、これらの変化はいまだ一時的なものであり、確定的なものとみなすには早すぎるというものでした。これらの活動家たちがその根拠としてあげるのはおおよそ次のような点です。
*ビルマ社会は未だに軍中心の社会であり、その点は軍事政権時代とは変わっていない。このことが現在の「変革」を不安定なものとしている。
*これまで軍事政権を支えてきたビルマ国民の考え方・態度が変わらなければ本当の変化は起こらない。ビルマを本当に民主的にするためには、権威主義から脱却させるような教育が必要である。
*その活動に対する表立った妨害はないものの、多くの活動家はいまだにビルマ政府の強い監視下にある。これは今なお政治活動が政府にとって危険であることを示している。
ですので、BRSAとしてはビルマ民主化勢力を支援し、社会が変わるように積極的に活動して行くことが必要だと考えられます。
②経済的変化
ヤンゴンの華やかな変化はほんの一部でしかなく、相変わらずビルマの多くの国民は貧困に苦しんでいます。JICAを含む多くの国外機関やNGOがビルマ発展のために働きはじめていますが、貧困の解決にはまだ時間がかかるでしょう。
ビルマの多くの人々が感じているのは、自分たちの国が「民主化」により豊かになったどころか、かえって貧しくなっているということです。これは、ビルマ国内で貧富の格差がますます拡大していることを意味しています。「ビルマからはミドル・クラスがもはやいなくなってしまった、この国にはほんの一部の金持ちと、それ以外の貧窮者しかいない」という言葉も聞きました。つまり、ビルマの経済発展はいまのところはほんの一握りの人々(cronyと呼ばれる)しか潤していないということです。このような貧富の格差は、社会の不安定要因であり、現在の好ましい変化の障害となる可能性を秘めています。ですので、これまでBRSAが行ってきた貧困層を支援する活動に加えて、貧富の拡大を是正する活動も行う必要があるのではと考えています。
③国民の和解
民族間の不信・対立に加えて、現在のビルマは、宗教間対立に揺れています。こうした問題を解決するのは、異なる立場の人々どうしの対話と相互理解以外にはありませんが、いまのところそのような試みは十分にはなされておらず、またその必要性も一部の宗教者を除けば広くは理解されていないようです。
国民の間の対立は国の安定を脅かす最大のものであり、これこそが長い軍事政権の支配の口実となったことでもありました。それゆえ、ビルマ国民がこの問題をどう解決するかが、ビルマの民主化と平和の鍵ともいえるのです。
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